産まれた子供は、障がいを持っていました。

「お子さんに奇形が見られます。」わが子が産まれて、先生から始めて言われた言葉に頭は真っ白になりました。

「落ち着いて聞いてね・・・」嫁が放った言葉

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「帰りたい。おうちに帰りたいよ・・・」

 

 

そう言った嫁は、暫く無言になった後、僕に訂正を入れる。

 

「ごめん、取り乱した」

 

その声はハッキリしていた。

 

子の為に強くあろうとする気持ちと、不安定な気持ちが入り混じっているのだろう。

 

なぜ、今隣で寄り添ってあげられないのか。

 

嫁には及ばないが、僕自身も辛かった。

 

 

GWがあけて、仕事は始まっていたが、僕は会社に連絡してこの日も休みを貰った。

 

 

そして、病院で待つ嫁と娘のもとを急ぐ。

 

娘は、昨日と同じく、呼吸記録の為、足に器具。

そして、腕と足に絆創膏がたくさん貼られていた。

 

嫁は僕が来ることを確認すると、すぐに眠りに付いた。

 

昨晩も眠れなかったのだろう。おつかれさま、ありがとう。

 

 

今日の検査は、血液検査、胸部レントゲン、脳のMRIだった。

 

血液検査に関しては、産まれたばかりは甲状腺の数値が高かったが、数値は通常に戻っていた。

 

胸部レントゲンに関しては問題ないとの事。

 

脳のMRIに関しては、結果は夜になると言っていたので待っていたのだが、

結局、病院の面会時間ぎりぎりまで粘ったが、MRIの結果を僕が聞くことはできなかった。

先生いわく脳のMRIについては「念のためだから」

 

と言っていたので、気にもとめなかった。

 

 

 

そして、その夜、またしても嫁から電話。

 

一言めの言葉に、僕はまたしても放心状態に。

 

「落ち着いて聞いてね・・・」

 

そんな一言目、嫌な予感しかしないよね。

嫁は続けて話しだす。

 

「脳のMRIの結果が出たみたいなんだけど、下垂体のところに白い丸いものが映っているそうなの。」


「詳しいことは、明日、脳外科の先生から説明があるそう」

 

この時、何を話したか良く覚えていないが、僕は朝方までネットで情報を集めていた。

 

最終的に、一つの仮説を立てて僕は携帯を片手に眠りについた。

 

翌日は、午前中職場に顔を出し、事情を話した。

正直、もう何も無いと思っていたので、その日から通常出社するつもりであったが、検査結果を聞くために急遽、午後に休みを貰う。

 

午前中の仕事は何故か捗った。

あらゆる会社の人、先輩、上司、部下が僕に協力してくれた。

 

ありがたい。

 

そんな気持ちの中、僕は病院に向う。

 

 

病院には、妻の母が来ていた。

そして、嫁は僕が来るのを確認して、娘の右手を握りながら眠りについた。

 

僕は、検査結果の時間まで、眠る嫁と娘を見つめながら病室で待機した。

 

そして、来る検査報告。

 

先生は撮影したMRIを見ながら僕たちに語りかける。

 

「場所的に考えられるのは、ラトケ嚢胞か下垂体卒中による出血か腫瘍ですが、たぶんラトケ嚢胞だと思われます。」

 

昨晩立てた仮説どおりだった。

 

タトケ嚢胞は基本的に無害であることを知っていたため、僕は胸をなでおろす。

 

そして、昨晩調べていて気になる病気についてもたずねる。

 

「先生、頭蓋咽頭腫の可能性はありますか?」

ネットの情報ではあるが、頭蓋咽頭腫は厄介な病気。

そして、手術での後遺症が残りやすいというと記載されていた。

 

「可能性は低いですが、頭蓋咽頭腫の可能性もあります。しかし、赤ちゃんの時に頭蓋咽頭腫があるケースはあまり聞いたことが無いです。」

 

「でも小児頭蓋咽頭腫というものもありますよね?」

 

「それはもう少し大きくなってからのケースが多いですね。」

「新生児のMRIをあまり見る機会があまり無いので、念のため小児専門の病院に紹介状を書きますのでそちらでも診てもらってください。」

 

つまり、今は判断できない。

通常、新生児でMRIを撮ることが少ないので、参考資料が少ないのだと言う。

 

この診断結果で、何も分からないということが分かった。

 

検査結果で、いつもよくないことを伝えられていた僕たちにとっては、その分からないと言う回答も良い回答として捉えていた。

 

そしてその後、小児科の先生より、


心身障害者総合病院 脳神経外科
心身障害者総合病院 小児内科 遺伝子
小児保健医療総合センター 整形外科

 

以上3箇所の紹介状を渡された。

そして先生から言われた言葉に、嫁はとても嬉しそうな顔をしていた。

 

「では、退院しましょう!」

 

その後、嫁は嬉しさあまりに涙を流した。

 

さぁ、我が家へ帰ろう。

そして家族3人で一緒に過ごそう。

 

僕たちは、心に残る不安と家に帰れるという嬉しさの気持ちを持って家に帰った。

この長すぎる3日間は、僕たちの体力とメンタルをかなり削った3日間だった。

 

次は、当たり前が当たり前じゃない世界についての話。

健康体なら、まず足を運ぶことの無い心身障害者センターの話。

 

 

振り返ってみて

検査を終えて、とりあえずわが子に対する障がいについて洗い出しが終わったことになる。

まだ、不明確なことは多いが、とりあえずこれ以上は何かしらの問題も出てくる可能性が低いのは確か。

しかし、僕たち家族の笑顔が出産前よりも減っていたのも事実。

この先、僕たちは本当にこの子を育てていけるのか。そんな不安も暫く抱えていた。

 

1年1ヶ月経った今の話。

娘は1歳を迎えたので、再度MRIを撮ることになった。確か先週だったか、そのMRIの結果を聞きに言った。

下垂体というところに白いしこりのようなものが映っていたのだが、1年経った今は特に異常は見られなかった。

しかし、下垂体が少し大きいのでは、と言う見解もあったため、これも経過観察となっている。

その他、娘に異常はなく、成長も順調。いまだに「ママ」は言うのに「パパ」と言ってくれないのは僕的には辛いのだが、子が順調に育っている姿を見るだけで幸せを感じている。

 

娘に対して一言、言えるなら

早く「パパ」って言ってくれ!

ということだけだろうか。